猿に化ける美濃の河童
カワエロ
ノシ(=主) / ヌシ(尾張での呼称) / ガワイロ / カワイロ / 河童
川で泳いでいて、ふいに水が飴のように重くなったら気をつけろ。踵のない足跡の主が、岸の木陰から白い顔でこちらを覗いている。「相撲を取ろう」と笑って手を引く子どもの、その腕はやけに長い。
概要
カワエロは、岐阜県揖斐郡・武儀郡に伝わる河童の一種。川底から出るときは白顔・黒眉の猿に化けるが、踵のない足跡でそれと知れる。頭の皿に毒を持ち、川の水を粘らせて泳ぐ者を捕らえ、尻子玉と爪を抜くとされる。主を意味するノシとも呼ばれた。
出現
現れるのは美濃の山あいを流れる川。水中では決して姿を見せず、川底から出るときに顔の白い猿へ化けて岸辺に潜む。泳ぐ人の前で川の水が急に飴のように粘れば、それはカワエロに見込まれた合図で、もがくほど岸へ上がれなくなる。子どもの姿で近寄り、相撲を挑んでくることもある。
伝承
揖斐郡や武儀郡板取(現・関市)では河童をガワイロ・カワエロと呼び、直江廣治「板取雑記」(『民間伝承』1940年)などの民俗記録に採集されている。谷汲村では引いた者の尻子玉と爪を乙姫への土産に持ち去るといい、祇園祭を行うと引かなくなると伝わる。胡瓜の尻を食べて川へ入る禁忌も語られる。
特徴
皿に湛えた毒で川水を自在に粘らせ、獲物の自由を奪ってから水底へ引き込む。陸では白顔に黒眉の猿へ化けて人に近づくが、踵のない足跡が正体を明かす。腕は関節が緩く、相撲で手を引けばするりと抜ける。捕らえた人からは尻子玉と爪を抜き取り、乙姫への土産にするという。