稲を盗んだ者に憑いて乱心させる憑き物
ゲド
ゲドウ / 外道
ほんの一握りの稲だった。だがその夜から男は叫び続けた。嚙む、あの家のゲドが俺を嚙む、と。壁の隙間へ、我が身の隙間へ、見えぬ小さきものが入り込もうとする。以来その家もまた、隣人が縁組を避ける「持ち」の家となった。盗まれた稲は、けっして返らない。
概要
ゲドは、島根県や広島県を中心とする中国地方に伝わる憑き物。特定の家に代々つく「ゲド持ち」の家系があるとされ、その家は多くが裕福だった。姿は猫くらいの大きさで黒褐色の毛色をした小動物とされ、飼い主のみに見えるという。ゲド持ちの家の作物を盗むなど関わりを持った者に憑き、精神に異常をきたさせると恐れられた。
出現
ゲド持ちと呼ばれる家の刈り入れの稲を盗んだ者のもとに、猫ほどの黒褐色の小動物として現れる。盗んだ者は急に精神に異常をきたし、「ゲドが俺に嚙みつく」「あの家のゲドがやってきて俺を嚙む」と大声で叫んで乱心する。姿は本人にしか見えず、土蔵や自分の体の隙間などに入ろうとして騒ぎ回ったという。
伝承
島根県・広島県など中国地方に分布する家憑きの一種で、狐持ちや犬神と同系統の憑き物筋として語られる。怪異・妖怪伝承データベースには島根県(1922年)や広島県(1956年)の採集事例が収められ、憑かれた者は四つ足で歩き暴れるとされ、対処に祈祷が行われたと記録される。ゲドウ(外道)とも呼ばれる。
特徴
猫ほどの黒褐色の小動物で、台所や納屋の下に飼われ小豆飯などを餌にするとされる。一つの群れにつき七十五匹いるといい、ゲド持ちの家に女児が生まれるたびに群れが一つ増え、娘が嫁ぐ際にはその眷属も連れて行くという。稲を盗むなど禁忌を犯した者に憑き、乱心させる。憑けられた家もまたゲド持ちとして恐れられた。