死を報せて雨戸を打つ人魂
タマセ
タマセ / 人魂 / ヒトダマ
死の二日前、魂は静かに体を抜け、青い尾を長く引いて夜の低空をゆく。棟をかすめ、雨戸を打つその音は、あなたと深く縁を結んだ者にしか届かない。もし戸の外で音がしたなら、それは別れを告げに来た誰かだ。
概要
タマセは、千葉県印旛郡川上村(現・八街市)で人魂を指す呼び名。死者や死にゆく人の魂が体外に抜け出したものとされ、丸い黄色の光の球として青い尾を長く引きながら夜空を飛ぶ。人の死の二、三日前にあらわれて縁の深い者のもとを訪れる、死の予兆の火である。地域によって飛び方が寿命を占うともいう。
出現
人が死ぬ二、三日前、その魂が体を抜け出してタマセとなり、寺や生前に縁の深かった人の家をたずねる。夜、家の棟や樹梢すれすれを飛び、雨戸や庭で大きな音を立てるが、その音は故人と縁の深かった者にしか聞こえないという。若い者の魂は速く、老いた者の魂は遅く飛ぶといわれた。
伝承
タマセは全国に伝わる人魂の一呼称で、千葉県印旛郡川上村(現・八街市)での呼び名として記録される。姿や飛翔の描写は斉藤源三郎「人魂に就いて」(『旅と伝説』1935年)に拠る。人魂が川や山を越すか否かで余命を占う俗信は岐阜県武儀郡洞戸村(現・関市)や和歌山県橋本市など各地に見られ、死の予兆として広く語られてきた。
特徴
タマセは、丸い黄色の光の球で、青い尾を三メートル余りも長く引きながら、家の棟や壁すれすれの低さを飛ぶ。人の死の二、三日前に体を離れ、縁の深い者の家をおとずれて雨戸を打ち鳴らす。若い者の魂は速く、老いた者の魂はゆるやかに飛ぶ。岐阜では川を越せば一年は生き、山を越せばすぐに死ぬと、その飛び方が持ち主の寿命を映すという。