家に富をもたらす憑き物筋の狸
ナベソコ狸
ナベソコ / ナベソコタヌキ
金持ちの家には、金持ちである理由がひとつ、暗がりにうずくまっている。鼬よりわずかに大きなその背を、主は正月ごとに裃を正して迎える。福は招くものではなく、飼うものだ。ただし、飼われているのが本当はどちらなのかは、誰も口にしない。
概要
ナベソコ狸は、岡山県阿哲郡熊谷村(現・新見市)に伝わる憑きもの筋が飼うとされた動物。名はタヌキだが普通の狸とは違い、鼬より少し大きな姿だったという。飼う家に富をもたらすといわれ、ナベソコの筋は金持ちの家に多いとされた。管狐や野干などと並ぶ、家に憑いて栄えさせる狐狸憑きの一種である。
出現
熊谷村の裕福な家々に、代々ひそかに飼われていると語られた。人前に出ることは少なく、実際に見たという者はまれで、その姿は鼬より少し大きい狸だったと伝わる。正月になると家の主が裃を身につけ、この狸を丁重に迎える。他家の者が福の主を目にする機会は、まずなかったという。
伝承
ナベソコは西日本に濃い憑きもの筋信仰の一系統で、岡山県阿哲郡熊谷村(現・新見市)での呼称。民俗学研究所編『綜合日本民俗語彙』第3巻(平凡社、1977年)、石塚尊俊『日本の憑きもの』(未來社、1959年)に記載がある。美作地方のトマッコ狸の変種とする説もあり、いずれも家を富ませる動物霊として語られてきた。
特徴
家に憑いて主を富ませる、福の憑き物である。害をなす山野の狐狸とは違い、迎える家に留まって代々の繁栄を支えるとされた。正月には裃姿の主に迎えられ、賓客のごとくもてなされる。鼬より少し大きいというその体は、蔵に満ちる富の分だけ、人の目からは遠ざかっていく。