主人の怨みを察して相手を取り殺す小蛇
ネブッチョウ
ねぶつてう / 子ブツテウ / ネブツチョウ
蛇はいつも、主人の胸の底で目を覚ましている。誰を怨んだか、口に出す必要はない。ただ心に一滴の憎しみが落ちれば、それは冷たい鱗を伝って、相手の寝床までまっすぐに這っていく。嫁入りの荷の隅にとぐろを巻き、憑く家はまた一つ、静かに増えていく。
概要
ネブッチョウは、埼玉県秩父地方に伝わる小さな蛇の姿をした憑き物。古くから特定の家に付きまとい、家の主人が誰かに怨みを抱くと、その思いを察して相手を煩わせ悩ませるとされた。怨みが強いときには相手の体を押し潰し、取り殺すとまで語られる。オサキ・生団子とともに「秩父の三害」と呼ばれ、憑き物筋として恐れられた蛇である。
出現
ネブッチョウが憑くのは土地ではなく「家」である。秩父の憑き物筋の家に代々付きまとい、その家の主人が誰かを深く怨んだとき、怨まれた相手のもとへ災いとなって現れる。屋敷や田畑に触れれば祟りがあると信じられ、住民はその土地に踏み込むことさえ避けた。家の子が縁組みで他家へ嫁げば、ネブッチョウも一緒についていくという。
伝承
ネブッチョウは秩父地方の憑き物筋伝承の一系統。関根邦之助「憑きもの信仰と家筋」(『秩父民俗』第10号、秩父民俗研究会、1975年)に記載があり、同誌第5号(1970年)の医療迷信の項にも挙がる。江戸後期の随筆『遊歴雑記』(十方庵敬順)は秩父の三害として「ねぶつてう」「ナマタコ」「お崎狐」を記す。憑き物筋は婚姻差別の一因ともなった。
特徴
小さな蛇の姿で家に憑き、主人の心を映す鏡のように振る舞う。主人が抱いた怨みを察し、その相手のもとへ音もなく忍び寄って病や災いをもたらす。怨みが深ければ相手の体を締めつけ、押し潰して命を奪う。憑いた家の田畑や屋敷を守り、無断で触れた者には祟りを下す。縁組みの列に紛れて嫁ぎ先へと移り、憑く家を静かに増やしていく。