加茂湖に棲む一つ目の主
一目入道
鉤だけは、返してくれ。毎晩、生きた魚を届けよう――その約束を、こちらは一度も違えなかった。陸に上がれば手も足も出ぬ身の上で、それでも夜ごと湖から律義に届け続けた恩義を、忘れたのは人の方だった。
概要
佐渡・加茂湖の主とされる一つ目の妖怪。陸に上がって馬に戯れ捕らわれた際、瑠璃の鉤で獲った魚を毎晩献上すると約束して放されたが、馬主が鉤を返さず約束を破ると、以後は正月十五日ごとに馬主の家を襲うようになったと伝わる。
出現
佐渡・加茂湖畔に繋いだ馬が、いつのまにか誰かに乗り回されていたら一目入道の仕業とされる。捕らえると陸上では手も足も出ず、瑠璃の鉤で獲った生きた魚を毎晩献上するので許してほしいと懇願してくる。約束を違えた家には、正月十五日の夜になると押しかけてくるという。
伝承
現存する最古の記録は中野城水『伝説の越後と佐渡』後篇(文章院、1924年12月刊)で、当初は「ひとつめにゅうどう」と読まれた。巖谷小波編『大語園』がこれを「一目入道」と表記し読みを変えたため、後続の文献でも表記・読みの混乱が見られる。水木しげる『日本妖怪大全』にも収録される。
特徴
頭上にただ一つの目を持ち、陸に上がると本来の力を発揮できない一方、湖の中や夜の岸辺では並外れた力を見せるとされる。交わした約束は毎晩欠かさず果たす義理堅さを持つが、裏切られると豹変し、正月十五日ごとに馬主の家へ押しかけて様々な妨害を繰り返す執念深さも併せ持つ。