登拝者の品行を正す秋葉山の天狗
三尺坊
精進せよ、と亭主は繰り返した。聞き入れず膳を平らげた十六人は、九分目まで登ったところで霧に呑まれ、気づけば五、六里下の麓に転がっていた。誰も怪我はなかった。それがかえって、恐ろしかった。
概要
遠州秋葉山に住む天狗。品行の悪い登山者や精進を怠る者に、山の上から投げ落とすなどの制裁を加える。秋葉権現の縁起では、修行によって天狗に変じた修験者が秋葉山に至った姿とされる。
出現
遠州秋葉山の山中、白狐にまたがる鎧姿の天狗として現れる。麓の宿では登山前に精進料理を守るのが習わしとされ、これを破って肉食を続けた一行が山頂近くまで登ると、たちまち深い霧に包まれ姿を見失うという。
伝承
秋葉山の三尺坊は、越後の蔵王権現で修行した修験者が天狗と化し、大同4年(809年)に秋葉山へ至ったとする縁起が伝わる神仏習合の権現である。寛延年間(1748〜1751年)、紀州からの代参者一行が禁を破って懲罰を受けた逸話も伝えられている。
特徴
秋葉山の主として、精進を怠り品行の悪い者が登山すると、深い霧で視界を奪い、麓まで一気に運び落とす。もっとも命までは奪わず、放り出された者に大きな怪我はないとされる。江戸中期、紀州から代参で登った一行が禁を破って雉を食べ、この仕打ちを受けたと伝わる。