対で現れ音を立てて脅す道具の付喪神
乳鉢坊と瓢箪小僧
打たれるために作られたのではない、その鉢と摺鉦が、ひとりでに鳴り始める。瓢箪の中で揺れる何かの気配とともに、逃げ場のない音の壁が夜を満たしていく。
概要
乳鉢坊は薬をすり潰す鉢、または仏事の打楽器・摺鉦を頭にかぶった姿の付喪神。瓢箪を頭に見立てた瓢箪小僧と対で描かれる、鳥山石燕の妖怪画集に由来する妖怪である。
出現
古い寺社の仏具や、念仏踊り・盆踊りで長く使われてきた道具が、年月を経て妖怪になったと伝わる。蔵や古道具の中に潜み、人けの絶えた堂内や祭りの後の境内で、ふと物音とともに姿を見せるという。
伝承
この付喪神が描かれたのは、鳥山石燕の妖怪画集『画図百器徒然袋』(天明4年・1784年刊、上中下3巻)である。同書には室町時代の『百鬼夜行絵巻』に由来する、名もない怪を石燕が意匠化した妖怪も多く含まれる。瓢箪は朝鮮からの渡来品で、酒や薬を入れる生活の必需品として重宝されたことから、長く使われた器物に霊が宿って妖怪化したと考えられている。
特徴
瓢箪小僧が単独で現れる場合は、出くわした者を驚かせる程度で済む。だが乳鉢坊とともに二匹そろって姿を見せると、頭の鉢と摺鉦が凄まじい音を立てて打ち鳴らされ、居合わせた者は恐れをなして逃げ出すほかなくなるという。組んだときにこそ、この妖怪本来の力が発揮される。