旧主を捜して這う古矢筒の付喪神
古空穂
誰にも顧みられなくなった矢筒に、かつて弓を引いた腕の記憶だけが残っている。今はただ、床を這って主を捜すだけだ。
概要
矢を収める道具「空穂(うつぼ)」が長い年月を経て化けた付喪神。毛皮や鳥の羽根を貼った空穂ほど、妖怪になりやすいと伝えられる。
出現
武具を納めた蔵の片隅や、古戦場跡の物置に打ち捨てられた空穂が、何十年も顧みられぬまま放置された末に姿を現す。人目を避け、床を這うように動くという。
伝承
鳥山石燕『百器徒然袋』(1784年・天明4年刊)に描かれた妖怪で、玉藻前退治で知られる武士・三浦介と上総介が用いた古い空穂ではないかと石燕自身が推測している。
特徴
武人の武功と共に忘れ去られた無念を宿し、夜な夜な床を這って主を捜すというが、人に危害を加えたという記録はなく、ただ静かに旧主の面影を追うのみとされる。