眠る魂が抜け出した、夜道の生首
夢霊
その晩見た怖い夢を、彼女はまだ知らない――窓の外を彷徨っていたのは、紛れもなく自分自身だった。
概要
寝ている体から抜け出した魂が女の首となって外を歩く。本人は夢の中で追いかけられている感覚を持っている。
出現
福井の田舎道を、夜明け前に旅立とうとした男が歩いていた。大きな石塔の上に鶏らしき影を見つけ、月明かりで確かめると、それは女の生首で、男の顔を見てケラケラと笑った。
伝承
寛文3年(1663年)刊の仮名草子『曾呂利物語』に収められた「女の妄念迷ひ歩く事」がこの話の原型とされる。同書は睡眠中に魂が肉体を離れて彷徨うという離魂の観念を背景に、夢に見た出来事と現実の怪異とを重ね合わせて語る、福井の話として伝えられている。
特徴
生首は宙を飛び、刀を抜いて追う男から巧みに逃げて夜更けの町まで走り抜け、目当ての家の窓からスッと吸い込まれるように消える。斬りつけても手応えはなく、傷を負うことはない。正体は眠っている女の魂そのもので、朝になると本人は「怖い夢を見た、男に斬られそうになった」と語る。