松明を灯し山野を歩く、巨躯の化け物
大入道
山ひとつ抱えるほどの影が、松明の火を両脇に灯してゆっくりと歩いてくる。逃げても、無駄だ。
概要
巨大な男の形をした化け物。伊吹山では体に松明のような明かりを灯して進み、通った跡の草が焼け焦げていた。
出現
夜道や山中、野原など人気のない場所に現れる。江戸中期、三河吉田(現・豊橋市)の商人がすすきの原でつむじ風に遭い、馬の足を折られて動けずにいたところへ、身の丈四メートルほどの化け物が歩み寄ってきたという記録がある。これは大入道としては小さい部類とされる。
伝承
滋賀県の伊吹山での出現は、江戸中期の巷談集『月堂見聞集』巻十六「伊吹山異事」に記録され、地震と勘違いして外に出ようとする村人を古老が制した話として伝わる。三河吉田の記録は随筆『煙霞綺談』にあり、そこでは「仁王のごとき大入道」が土地で古くから「見越入道」と呼ばれてきたものと語られ、遭遇した商人はまもなく病死したという。
特徴
大きなものは山ひとつを抱えるほどにも及び、遭遇した者を見下ろす両目は百枚の鏡を並べたように輝くという。人馬を踏み越えて通り過ぎるだけで直接手を下すことは少ないとされ、正体は狐狸や川獺、鼬など土地の獣が化けたものと説明されることが多い。