力士を病死させた淵の主
大旅淵の蛇神
道を塞ぐ大蛇に苛立ち、力自慢の男は松の木でその背を打ちすえた。その夜から、蛇の恨み言が毎晩枕元に立つ。目覚めるたび熱は上がり、やがて肌には見覚えのない鱗が浮いていた。
概要
淵に住む巨大な蛇神。背を松の木で叩いて無礼を働いた強力無双の力士を、病で悶え死にさせた。
出現
高知県大豊町(旧本山郷天坪のあさない)を流れる赤割川、その淵・大旅淵に棲むとされる。金気を淵に投げ入れれば途端に荒れて暴風雨を呼ぶといわれ、里の者は近づくのを避けた。それでも淵で釣りをする者や、夜更けにその近くを通りかかる者の前には、思いがけない形でその気配が姿を現す。
伝承
地元に古くから口碑として伝わる話で、成立の時期や記録者は判然としない。夜更けに淵のほとりで道を阻む大蛇に行く手を塞がれた力士・国見山が、苛立ってそばの松の木を引き抜き、その背を打ち叩いて追い払った。以来、夜ごと蛇神が枕元に立って苦悶を訴え、力士は高熱を発して悶え死に、その体には蛇の鱗のようなものが生えていたという。
特徴
淵には人を化かす力もあるとされ、そこで釣った魚を持ち帰ると、いつのまにか木の葉に変わっていたという話も残る。金気を放り込めば猛烈な風雨で応じ、無礼を働けば夜ごと枕元に立って苦しみを訴え続け、じわじわと体を蝕んで死に至らしめる執念深さを持つ。