酒を求め田を手伝う、天草の水の童
天草の河童
天草の河童 / ガラッパ
『酒を一杯くれたら、田は儂が植えちゃる』——三歳ばかりの小さな影は、そう言って夜通し働いた。ありがたや、と何度も酒を注ぐうちに、いつしか植えられていたのは、田ではなく男の正気であった。
概要
天草地方に伝わる河童。三歳児ほどの背丈で酒をせがみ、酒と引きかえに田植えを手伝うと約束する。よく働くうえ気立ても優しいが、この河童を使い続けた人間はやがて心を病み、発狂したと語り伝えられる。
出現
田植えの季節になると水辺に姿を見せ、酒をねだる。約束どおり田植えや草取りを黙々とこなし、夜を徹して働くこともあったという。天草には栖本河童街道をはじめ、各地に河童の伝承や像が点在している。
伝承
肥後は河童発祥の地とされ、球磨川には総大将『九千坊』が渡来したと伝わる。天草市鬼池の『荒川弾正(さだなみ三郎)』は、水難者を神通力で救う善き河童とされた。九州では河童が人に憑くともいい、熊本では甘い声で不作法にふるまい、大分では錯乱し、長崎ではうわ言を口にするとされた。
特徴
水の神として溺れる者を救う一面を持ちながら、酒を好み、田仕事をよく手伝う。しかしその力に頼りすぎ、なれなれしく使役する者からは正気を奪う。恵みと祟りが背中合わせの、天草の水の童である。