憎い男を追う、飛ぶ女の首
女の人魂
おんなのひとだま
惚れた恨みは、首から下を置き去りにする。
概要
女の首が人魂のように宙を飛び、恨みを抱いた男の喉笛へ噛みつくという、愛媛県宇和島に伝わる怪異。眠る体から首だけが抜け出て飛び回る「抜け首」の系統に数えられる。
出現
深夜、寝静まった家々の上を、青白い光を引きながら女の首が漂う。標的となるのは、かつてその女を裏切った男ただ一人。逃げても執拗に追いすがり、首筋めがけて飛びかかってくる。
伝承
首や魂が体を離れて飛ぶ怪は各地にあり、江戸前期の『曽呂利物語』には、眠る女の身から抜け出た首が夜ごと飛び回るさまが記される。宇和地帯では死者の霊魂をボウコと呼びならわし、満たされぬ思いを抱いた女の魂が首となって飛ぶ話が、この土地の湿った闇のなかで語り継がれてきた。
特徴
胴を離れても意志は衰えず、ただ一人の相手だけをどこまでも追う一途さを持つ。武器は鋭い歯で、噛みついた喉からは容易に離れない。昼は何食わぬ顔で人に紛れ、夜になるとつのる執念に引かれて首が抜け出る。