四国狸を束ねる、屋島の総大将
屋島の禿
太三郎狸 / 屋島の禿狸 / 蓑山大明神
大寒の夜、屋島の空に源平の武者がよみがえる。八艘飛びの影、流れる弓、寄せては返す鬨の声——それは八百年前をその目で見た古狸が、集う眷族のために夜な夜な描く、まぼろしの絵巻である。海を渡る風だけが、それが幻だと知っている。
概要
香川県屋島に伝わる古狸で、太三郎狸とも呼ばれる。変化の妙技は日本一と称され、四国じゅうの狸を束ねる総大将にまで上りつめた。佐渡の団三郎狸、淡路の芝右衛門狸と並ぶ日本三名狸の一体で、屋島寺の守り神として今も祀られている。
出現
大寒の頃になると、三百匹もの眷族が屋島の山へと集った。屋島に戦乱や凶事の兆しがあれば、いち早く屋島寺の住職の夢枕に立って報せたと伝わる。人を脅かすためではなく、山を守り、次代へ古い記憶を語り継ぐために姿を見せる狸である。
伝承
かつて矢傷で死にかけた狸が平重盛に助けられ、恩義から平家の守護を誓った。その子孫が屋島に棲みついたのだと語られる。源平の戦を間近に見たこの狸は、のちに猟師に撃たれて落命し、霊は阿波へ移って髪結いの女に憑き、吉凶を告げたとも伝わる。
特徴
得意とするのは幻術で、義経の八艘飛びや弓流しといった源平合戦の名場面を、夜空へありありと映し出してみせる。化けの妙技は日本一と称えられ、やがて善行を重ねて蓑山大明神の神号を授かった。人を害するより、屋島の地を守ることを本分とする。