屏風の陰から夜をうかがう影
屏風のぞき
屏風闚 / のぞき女
初夜の床、屏風の縁からふいに白い顔がのぞく。痩せた女が長い髪を垂らし、こちらをじっと見ている。声もなく、手も出さず、ただ見る。屏風を蔵へ仕舞えば消える——けれど今夜、あなたの背にも一双の屏風は立っていないか。
概要
鳥山石燕の画集『今昔百鬼拾遺』に描かれた妖怪で、屏風の外側からそっと人を覗き込む。石燕は、七尺もの高い屏風の向こうまで難なく覗くと記した。多くの男女の秘め事を見つづけた寝室の屏風が、付喪神と化したものだともいわれる。
出現
夜、屏風を立てて眠る者の枕辺に、いつのまにか顔をのぞかせる。とりわけ新婚の初夜など、人目を忍ぶ床にこそ出るという。屏風を使わずに寝れば現れず、屏風を蔵へ片づけてしまえば、それきり姿を見せなくなるとも語られる。
伝承
秋田・角館の武士が結婚した初夜、屏風の陰から痩せた女が長い髪を垂らして覗いていた。女は「のぞき女」と名乗ったという。石燕の絵解きには、秦の始皇帝が刺客に襲われて飛び越えたという咸陽宮の七尺の屏風が下敷きにあるとも語られる。
特徴
屏風という一枚の隔てを、まるで無いかのように越えて人を見つめる。どれほど高い屏風も障りにはならず、視線だけがぬっと差し込む。害をなすでも触れるでもなく、ただ覗く——その眼差しの不気味さこそが、この妖怪の本領である。