黄色い血を流す、岩手の巨大な鬼女

山婆

山姥 / 山母 / 山姫 / 山女郎

風より疾く、雷より容赦ない。二メートルの影が月明かりの中で振り返る、その一瞬に目をつむれぬ者は斬られる。逃げ延びた者だけが夜明けを拝め、傷から流れるのはなぜか鮮やかな黄色い血だったという。

山婆の立ち絵

危険度・希少度

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

山姥のこと。2メートルを超す巨体で、目は大きく光る。斬られると黄色い血を流し、風のように速く走る。

出現

岩手の深い山を分け入った先、里の灯も届かぬ谷筋や古い獣道で、猟師や炭焼き、山越えの旅人がふいに行き当たる。はじめは薪でも拾う土地の老婆かと見えるが、その目は爛々と大きく光り、見上げるほどに背が高い。人けのない奥山でひとりこの影に出くわしたなら、逃れる術はほとんど残されていない。

伝承

山婆(山姥)は、奥山に棲むとされる老女の姿の妖怪で、日本各地に伝承が残る。「山母」「山姫」「山女郎」とも呼ばれる。

起源については、山中で生活していた人々の存在を反映したものとする説や、山の神に仕える巫女が零落して妖怪化したとする説がある。『遠野物語』には、山に隠れ住んだ女性が山姥になったという話が記録されている。

姿や逸話は地域によって異なり、宮崎県では「ヤマヒメ」と呼ばれ洗い髪の姿で美声を発するとされ、岡山県では眉目秀麗な20歳ほどの女性で猟師の銃弾を素手で受け止めたと伝わる。

古典文献にも記録があり、『今昔物語集』には、天延4年(976年)に源頼光が足柄山で老婆と童形の若者に出会い、老婆が「赤い竜と通じて生まれた子が坂田金時(金太郎)である」と語ったとする説話が記されている。また、世阿弥作とされる能の演目『山姥』が現在も伝存し、上演されている。

特徴

深い山奥に棲みつき、里から遠く外れた獣道や谷筋で、迷い込んだ木こりや旅人が通りかかるのをじっと待ち構えている。

普段は腰の曲がった老女の姿をしているが、時には妙齢の美しい女や、洗い髪のまま歌う女に化けて、人の警戒を解かせる。気に入らぬ相手には牙を剥いて襲いかかり、その身を喰らってしまうが、心根の優しい者には囲炉裏の火を貸し、粥や焼き餅を振る舞ってもてなすこともある。

銃で撃たれても弾を素手で掴み取るほどの怪力を持ち、ひとたび怒らせれば、風のように速く駆けて追いかけてくる。斬りつけられても怯まず、傷口からは人とは違う色の血を流しながらなお向かってくるという。

山中でひそかに子を宿し育てることがあり、赤子のうちから怪力を持つ子を産み育てたという話も伝わる。

山婆のカバー画像