魚の匂いを放つ、遠州の川妖怪
川猿
川面から漂う生臭さに気づいたなら、もう遅い。手を出さなければ牙も向けぬ臆病者――だが一度でも助けたなら、その顔を生涯忘れはしないという。
概要
川猿は遠州(静岡県)榛原郡に伝わる川辺の妖怪。名に「猿」を持つが、実際はカワウソや河童に近いとされ、全身から魚の臭気を放つ。子供の姿に化けて人を惑わし、害を加えられると相手の皮膚や肉をかきむしって重傷を負わせる。馬を死なせる疫神としても恐れられた。
出現
川筋や淵のほとりで、ふいに小さな子供が現れて人を誘い、道に迷わせて化かす。近づくと、あたりに生臭い魚の匂いが漂うのが川猿を見分ける手がかりとなる。馬を連れていれば災いは大きく、川猿に出会っただけで馬は倒れて死ぬともいわれ、馬曳きに恐れられた。
伝承
遠州榛原郡では、川辺に棲む川猿が子供に化けて人を化かすと語られた。害を加えれば相手の全身の皮膚や肉をかきむしって重傷を負わせる一方、本来は臆病で、助けてくれた人間の顔は決して忘れないという。弱点は目と股にあり、そこへ矢を受けると力がたちまち衰えると伝わる。柳田國男『山島民譚集』などに採録されている。
特徴
川辺に潜み、全身に魚の臭気をまとう。猿の名を負うが動きはカワウソや河童に近く、しばしば童子の姿に化けて人を惑わす。害を受けると鋭い爪で皮膚や肉をかきむしるが、根は臆病で、恩を受けた相手の顔は忘れない。馬を死に至らせる力を持ち、目と股を射抜かれると力を失う。