江戸城の外堀で人を招き、水へ引き込む河童

弁慶堀の河太郎

弁慶堀の河童

「助けてやろう」と伸ばした手を、水の底から冷たい指がつかんで放さない。振りほどいて逃げ帰った男の体からは、四、五日たっても堀の水の臭いが消えなかったという。

弁慶堀の河太郎の立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力

条件がそろえば、人の命にも関わる。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

S
稀少性

ただ一体、一度きりの怪異として語られる。

概要

堀の中から名前を呼び手招きして水中に引き込もうとする。正体は河童で、遭遇すると激しい悪臭がつくという。

出現

江戸城の外堀のひとつ、九段の弁慶堀のほとりが縄張りである。雨の降る夜更け、堀端の道を屋敷へ急ぐ者があると、真っ暗な水面からその名を呼び、小さな子供の姿で手招きをしてみせる。人が落ちたのかと堀を覗き込んだ、まさにその瞬間が、この水妖にとらえられる隙となる。

伝承

江戸で留守居役を勤めた加賀山城守の従者が、雨の夜更けに小川町の屋敷へ帰る途中、弁慶堀のそばで見知らぬ者に名を呼ばれた。水中の子供へ助けの手を伸ばすと、相手は石のように動かず、逆に従者のほうが次第に水へ引き込まれていった。力を込めて振りほどき逃げ帰ったが、ずぶ濡れの体には強烈な悪臭がまとわりつき、水で洗っても落ちず、四、五日してようやく消えたという。松浦静山が随筆『甲子夜話』に書き留めている。

特徴

正体は堀に棲む河童(河太郎)とされ、水面からのぞく子供のような姿で人を誘う。差し伸べられた手をつかむと、その体は見た目に反して石のように重く、振りほどこうとしても容易に放れない。捕らえた相手には強烈な悪臭をしみつかせ、水で洗い流してもなかなか落ちない。人を驚かすだけでなく、水底へ引き込んで溺れさせようとする、油断のならない水妖である。

弁慶堀の河太郎のカバー画像