障子に映る、実体なき女の影
影女
かげおんな / 影女房
男やもめの家に、月がさしこむ。障子の向こうに、ほっそりとした女の影がひとつ。振り向いても誰もいない。それでも影は、確かにそこで微笑んでいる。捕まえようと伸ばした指の間を、月光がすり抜けていく。
概要
物の怪が宿った家に、月光を受けて浮かび上がる女の影。男ばかりの所帯に住みつくとされ、影の形でしか姿を見せないため、その実体を捉えることは難しい。江戸の絵師・鳥山石燕が妖怪画に描いたことで知られる。
出現
月の光がさす夜、誰もいないはずの障子に女の影がすっと映る。窓辺に若い女の顔がのぞいたり、庭に美しい女が立ち現れたりもするが、こちらへ近づいてくることはない。雨のしめやかな夜更けなど、しんと静まった折に姿を見せる。
伝承
ある武士が雨の日に友を訪ねると、女房を亡くして独り身のはずの家の障子に女の影が映り、庭には美しい女まで現れた。友は「あれは影女だ」と笑ったという。鳥山石燕も画集『今昔百鬼拾遺』に、月影が障子へ落とす女の姿として描いており、絵師の創作とする説も根強い。
特徴
あくまで影として見られるものであり、確かな実体をつかむことはできない。門前を、鉦鼓を首に掛けた奇妙な老婆が行き来していたという話もあり、その老婆こそ影女の正体だったのではとも囁かれる。化け物とはいえ、女気のない家にほのかな彩りを添える存在でもある。