団子を食う、化けた石地蔵
怪地蔵
拝む手を合わせたその石仏、夜には団子の匂いに釣られて、のそりと歩き出す。
概要
石地蔵が夜ごと台座を離れて歩き出し、団子を食べていたという怪異。ありがたい仏の姿をとりながら、その正体は人里に潜む古狸であった。やがて薪で打たれて息絶え、堂内には手つかずの本物の地蔵が残されていた。信仰の対象が化け物だったという、後味の奇妙な一件である。
出現
相模国風祭村、いまの小田原市風祭の堂に祀られていた。日が暮れると仏は台座を離れ、村の団子屋へふらりと現れては供え物の団子をたいらげていったという。石の仏が夜道を行き来するさまは、目にした者の背筋を冷やした。
伝承
村人が不審に思い、歩く地蔵を待ち伏せて薪で打ちすえたところ、化けの皮がはがれて一匹の古狸が倒れていた。堂をあらためると本尊の地蔵は変わらず座しており、狸が仏になりすまして供物をかすめていたと知れた。地蔵や仏像に化けて人をあざむく狸・狐の話は、各地に伝わる。
特徴
変化を得意とする古狸の仕業で、選んだ姿が道端の石地蔵という点に狡さがある。誰も疑わぬ仏に化ければ、供えられた団子は労せず口に入る。人を襲うでも祟るでもなく、ただ甘い物欲しさに神仏を騙る、小狡くも間の抜けた化かし手であった。