壁から現れて人を招く、供養を求める白い手
招く手の幽霊
壁の隙間から、白い指がゆっくりとこちらを招く。おいで、ではない。弔っておくれ、と。
概要
家の壁から白い手だけがぬっと現れ、人を手招きするという怪異。その家や土地で亡くなった者、飢饉に斃れた者の亡霊が、供養を求めて手を差し伸べるものとされる。伴うのは手のみで、招きに応じてよいか否か、見た者を惑わせる。
出現
山梨県上野原市の秋山の地に伝わる。夜更け、古い家の壁や天井から白い手が音もなく生え出て、招くように指をゆっくりと動かす。人の寝静まった座敷や、久しく空いたままの廃屋で、幾度となく同じ手が現れたと語られた。
伝承
秋山の旧家に残る話で、飢饉や災いのために無縁のまま葬られた死者の霊が、成仏できずに手だけを現すのだという。この招きを鎮めるには、心を込めて弔い供養してやるほかないとされ、手厚く回向したのちには手が現れなくなった、とも伝わる。
特徴
現れるのは手のみで、顔も体も伴わない。人を招きこそすれ襲いはせず、その所作はただ供養を乞う訴えとされる。応じて手を取れば災いがあるとも、丁重に弔えば消えるともいい、生者の対応しだいで吉凶が分かれる、もの静かな亡霊である。