破れ口から舌を垂らす、古提灯の付喪神
提灯お化け
蔵の隅で百年、油の染みた紙の内に灯は絶えて久しい。だが破れ口が裂けて舌が垂れるとき、それはもう明かりの道具ではない。
概要
使い古された提灯が化けたとされる器物の妖怪。上下に割れた胴がそのまま大きな口となり、長い舌を垂らして一つ目でこちらを睨む。特定の土地の伝承を持たず、絵や芝居、お化け屋敷の演し物として親しまれ、日本の「お化け」の代名詞となった。
出現
出会いの舞台は、もっぱら絵の中や見世物の暗がりだというのが実のところである。伝承めかして語るなら、蔵や物置に打ち捨てられた年経た提灯が、真夜中にひとりでに宙へ浮かび、破れ口をあんぐりと開けて舌を垂らし、寝ずの番の者を飛び上がらせる、という筋になる。
伝承
古い道具に精霊が宿るという付喪神の考えから生まれた妖怪とされる。鳥山石燕は『百器徒然袋』に提灯形の妖怪を「不落不落(ぶらぶら)」の名で描いたが、その解説では狐火の類と説いた。江戸後期以降は狩野乗信『百鬼夜行之図』などに描かれ、おもちゃ絵やかるたへ広がった。山形県には提灯が正体だったという昔話も残る。
特徴
人を驚かすことをもっぱらとし、正面から襲って傷つけることはまずない。翼を得て夜空を飛ぶものもあれば、宙をふらふらと漂うだけのものもいる。突き出す長い舌とぎょろりとした一つ目は、見る者を怯ませるための脅しであって、ひとしきり驚かせれば満足したように闇へ紛れて消えてしまう。