人に化けて忍び寄り、正体を見せて驚き死にさせる赤面の鬼
朱の盤
道連れの侍が、ふと足を止めてこちらを向く。「その朱の盤とやら、こういう顔かね」——問い返す声より先に、顔じゅうが朱に濡れていた。
概要
顔一面が朱を流したように赤く、額に一本の角を持つ鬼のような妖怪。ふだんは人間の姿に化けて相手に近づき、油断させたところで恐ろしい本性を現す。会津や越後に伝わり、その顔を見た者は恐怖のあまり病みつき、命を落とすという。
出現
夕暮れの道で、同じ年ごろの侍や親しげな相手として現れる。世間話の折に妖怪の噂へ水を向けると、突如その顔が朱に染まり、額の角と皿のような目、耳まで裂けた口をあらわにする。会津・諏訪の宮のあたりで語られた話が名高い。
伝承
初出は怪談集『諸国百物語』(1677年)で「首の番」の名で載り、のちに『老媼茶話』(1742年)へ「朱の盤」として記される。後者には、若侍の山田角之進がその正体を確かめに出て、道連れの侍と帰宅後の女房に相次いで恐ろしい顔を見せられ、百日ほど患った末に死んだ話が伝わる。呼び名には朱の盆・首の番の表記もある。
特徴
人の姿に化ける術を持ち、言葉巧みに近づいて隙をうかがう。頃合いを見て顔を真っ赤に染め、針のような髪を逆立て、歯を雷のように打ち鳴らして本性をさらす。刃を振るうわけではないが、その形相を目にした者は正気を失い、病の床について落命するとされ、恐怖そのものを凶器とする。