油を盗んだ亡者が、赤子に化けて行灯の油をなめる。
油赤子
灯りが、また細くなる。畳には小さな手のあと。母は赤子を寝かせたはずが、行灯の油だけがきれいに失せている。――その泣き声を、聞いた者はいない。
概要
鳥山石燕が『今昔画図続百鬼』に描いた妖怪。近江大津で地蔵の油を盗み売った男の霊が、死後に迷い火となったという俗信を基にする。火の玉となって現れる、油にまつわる怪異の一つ。
出現
夜更けの大津のあたり、家々に火の玉となって忍び込むとされる。ともし火がふっと細るころ、行灯のそばに小さな赤子がうずくまっていたら、それが油赤子だという。
伝承
大津辻の地蔵に供えた燈明の油を、夜ごと盗んで売った男がいた。死後その霊は迷い火となってさまよったと伝わる。『諸国里人談』『本朝故事因縁集』はこの油盗みの火を記し、石燕はそれを赤子の姿に描いた。
特徴
油の玉となって素早く飛来し、家に入ると赤ん坊に化けて行灯の油をぺろぺろとなめ、なめ終えるとまた火に戻って去る。人に手を出すことはなく、ただ油だけを狙う。魚油をなめる猫の見間違いだろうとする説もある。