夜風に乗ってさまよう、生臭い海月の火の玉
海月の火の玉
生温い風が頬を撫でた夜は、刀を抜くな。斬れば二つに割れ、火は消えず、ただ生臭く顔に貼りつく。海月は、殺したつもりの者の顔にこそ、いつまでも張りついて離れない。
概要
海にすむ海月が風に乗って宙を舞い、暗い夜には火の玉のように見えるとされる怪異。鬼火の一種。斬りつけると松脂のように顔へ貼りつき、生臭いにおいを放つという。
出現
潮の香る夜道で、生温い風がさっと吹いたかと思うと、向こうから火の玉が風に揺られながら飛んでくる。近づいたところを抜き打ちに斬れば、火の玉は二つに割れ、糊のようにヒタと顔へ張りついて離れない。
伝承
加賀大聖寺(現・石川県加賀市)の侍が全昌寺の裏を夜中に通ると、生温い風とともに飛来した火の玉を斬りつけ、二つに割れた玉が松脂のように顔へ貼りついて翌日まで取れなかったと伝わる。古老は、海の海月が風に乗ってさまよい、暗夜には火の玉と見えるのだと説いた。江戸時代の奇談集『三州奇談』に名がみえる。
特徴
触れても熱くはなく、斬れば松脂か糊のようにねばついて顔から離れない。ふわりふわりと宙を漂うその正体は、海をただよう海月の魂が火の玉と化したものだと考えられ、あとには生臭いにおいだけを残す。