猪口をかぶった付喪神の虚無僧
猪口暮露
箱の中で、ちいさな尺八が鳴っている。蓋を開ければ、猪口をかぶった坊主が百人――さて、酒はどこだと問うている。
概要
猪口を被り爪楊枝の尺八を吹く小人。箱を破って現れる付喪神の一種。
出現
古い箱の蓋を内から押し破って、猪口を頭にちょこんと伏せた虚無僧姿の小人たちが、ぞろぞろと連れ立って現れる。深編笠の代わりに酒器をかぶり、爪楊枝ほどの小さな尺八を吹き鳴らす。唐の玄宗皇帝の夢枕に立った妖怪の一類とされ、まどろみのうちに見る幻のような、どこか剽軽な一群である。
伝承
鳥山石燕は解説に唐の玄宗皇帝の逸話を引き、『此怪もその類かと 夢のうちにおもひぬ』と添えた。名は、遊行僧の暮露と虚無僧、酒器の猪口をかけ合わせた言葉遊びで、古い言い伝えの裏付けは乏しく、天明4年(1784年)刊の『画図百器徒然袋』で石燕が生み出した創作とみられている。
特徴
剃髪せぬ半僧半俗の遊行者・暮露をかたどり、頭に伏せた猪口を笠の代わりとする。爪楊枝ほどの尺八を手に吹き鳴らしながら、箱の中から連れ立って湧き出てくる。虚無僧のいでたちをまとうが、その正体は古びた器物に宿った付喪神で、真の暮露ではないともいわれる。