尾が二股に裂けた、年を経た猫の化身
猫又
飼い猫が畳の縁で丸くなっている。だが、その尾が二つに裂ける日まで、この家に何年居ついているか、あなたは数えたことがあるか。手鞠の火が舞う夜、糸車の軋む音で、猫はもう答えを出している。
概要
年経た猫が化けたもの。火の玉を操り、糸車を回すなどの怪異を起こす。射殺された個体は体長1.5メートルもあった。
出現
越後のある武家では、毎夜、手鞠ほどの火の玉が畳の上をふわふわと漂い、召し使いの寝込みを脅かした。引き手のない糸車がひとりでに回り出す夜もあったという。ある日、主人が庭へ出て木の上をうかがうと、赤い手ぬぐいをかぶった老猫が尾と足で立ち、四方を見まわしていた。
伝承
山中に棲んで人を食うものと、飼い猫が年を経て化けるものの二系統が語られる。『徒然草』第八十九段は「奥山に、猫またといふものありて、人を食ふ」と記す。火の玉と糸車の怪をなした一件は、宝永年間成立の『大和怪異記』に「猫人をなやます事」として伝わる。
特徴
長く生きた猫は尾が二股に裂け、後ろ足で立ち、赤い布をかぶって人のように振る舞う。手鞠ほどの怪火を宙に漂わせ、糸車をひとりでに回すなど家中に怪異を起こす。急所を射抜かれてなお、身に立った矢を牙で嚙み折る膂力を持ち、老いた個体は体長一・五メートルに達する。