腹に棲みつく病の虫

病虫(びようちゅう)

やまいむし / 腹の虫 / ハラノムシ

医者は言う、癪の因はこの虫、疳の因もこの虫だと。誰の腹にも幾匹かは棲みついていて、機嫌を損ねれば暴れ、庚申の夜には抜け出して天へのぼり、宿主の罪をひとつ残らず告げてしまう。だからその晩ばかりは、村じゅうが灯をともし、まんじりともせず朝を待った。

病虫(びようちゅう)の立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力

条件がそろえば、人の命にも関わる。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

D
稀少性

夜道や家々で、ごくありふれて語られる。

概要

病気の原因とされる体内の虫。江戸時代には、これらの虫が苦痛をもたらすと考えられ、祈祷の対象となった。

出現

人の五臓六腑に棲むとされ、その姿を直に目にすることはない。腹が痛む、気が塞ぐ、子が夜泣きする——そうした不調のたびに、体の内側にひそむ虫の仕業として名指しされた。医者はその虫を鍼で鎮め、薬で下し、あるいは祈祷師が呪を唱えて封じにかかった。

伝承

戦国期の医書『針聞書』には、五臓六腑に巣くう六十三種の虫が、鬼・蛙・蛇・人面など思い思いの姿で写されている。道教由来の三尸は頭・腹・脚にひそみ、六十日ごとの庚申の夜、眠る宿主を抜け出して天帝へその罪を告げ、寿命を縮めるとされた。人々は夜を徹して虫の脱け出るのを防いだ。

特徴

虫は宿主の精を吸い、臓腑を蝕んで病を長引かせるという。頭に宿る上尸は首から上を、腹の中尸は臓腑を、脚の下尸は腰から下を病ませると分けて考えられた。虫封じや虫切りの札、庚申の講が各地に根づき、体内の虫とどう付き合うかという作法までが、そのまま暮らしに編み込まれていった。

病虫(びようちゅう)のカバー画像