網も蚊帳も断ち切る鋏の妖
網切
網は破れ、蚊帳は裂ける。残るのは、刃の通ったような静かな切り口だけ。
概要
夏に蚊帳や漁師の網を鋭い刃物で切ったようにズタズタにする。
出現
寝苦しい夜、干していたはずの漁網がいつの間にか無数に断ち切られている。網を家の奥に隠しても油断はならず、今度は寝床に吊った蚊帳が刻まれ、朝には蚊に刺され放題という。刃物を使った跡もなく、下手人の姿を見た者もいない。
伝承
鳥山石燕が画集『今昔画図続百鬼』に、蟹か蠍を思わせる鋏の手足を持つ姿で描いた妖怪。ただし解説文は添えられておらず、その素性は判然としない。妖怪研究家の多田克己は、「網」と小海老の醤蝦(あみ)を掛けた石燕の言葉遊びによる創作と推測する。山形県庄内地方の話も伝わるが、村上健司はその創作性を指摘している。
特徴
蟹の鋏のような両腕で、繊維でできたものを瞬く間に切り刻む。狙うのは漁の網と夏の蚊帳ばかりで、人そのものを傷つけたという話は聞かない。切り口は刃物を当てたように鋭く、それでいて現場に凶器も足跡も残さない。