夜の芭蕉林にひそむ妖精
芭蕉の精
六つを過ぎて葉音を踏むな。青い林の奥で、美しい影がこちらを見ている。
概要
芭蕉の木に宿る精霊。夜に通る女性を妊娠させ、牙の生えた鬼子を産ませると信じられ恐れられた。
出現
琉球・沖縄で、芭蕉の生い茂る林に現れる。日が暮れて六つを過ぎた頃、林を抜けようとする女性の前に、見目のよい男や異形の化け物となって立ちふさがるという。里ではこの刻限に女が芭蕉林へ入ることを固く戒めた。
伝承
夜の芭蕉林で出会った女性を孕ませ、十月ののちに牙の生えた鬼子を産ませると恐れられた。子は一度きりでなく以後も毎年生まれ続けるといい、熊笹を粉にして飲ませ絶やすほかなかったという。中国には女に化けて読経の僧を訪ねる精の話が伝わり、鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』はこれを「芭蕉精」として描いた。
特徴
ふだんは芭蕉の葉陰にひそみ、夜ごと美しい男子や恐ろしい怪物へと姿を変えて女を惑わす。触れられた者は望まぬ命を宿し、鬼の子を産み続ける定めを負う。刃物の気を嫌い、刀一振りを帯びた者には近づかないとされる。