苧を思わせる鬼女の妖怪
苧うに
麻を噛み、糸を引く手はとまらない。追えば、藪のむこうに——もう毛ひとすじ残っていない。
概要
鳥山石燕『画図百鬼夜行』に描かれた妖怪。口が耳まで裂けた鬼女の顔をし、全身が毛に覆われる。乱れた毛が積み上げた苧——カラムシや麻の糸束——を思わせることから名づけられ、山姥の一種とも解される。
出現
石燕の描く図では、川べりの藪をかき分けるようにして姿を見せる。深い山あいに棲むとされ、越後の谷では、里へ下りてくる山姥の姿にこれを重ねて語り伝えてきた。
伝承
新潟県糸魚川、旧西頸城郡小滝村には、訪ねてきた山姥が麻を口に噛んでは糸を引き出し、人には及びもつかぬ速さで大量の苧を績んでみせたのち、ふいに家を出たという話が残る。あとを追った女たちが目を凝らすと、その姿は忽然とかき消えていたという。
特徴
麻を糸に績む手わざは人智を超え、瞬く間に大量の苧を紡ぎ上げる。鬼女めいた恐ろしい面差しながら、人の手仕事を黙って助けることもあるという。ただ去り際は追う間もなく忽然と消え、深山幽谷の奥へ帰ってゆく。