娘を娶り子蛇を産ませた黒部川の主
蛇の怪
蛇の怪 / お光伝説 / 愛本の大蛇
川辺で微笑む若者の正体は、淵に潜む大蛇であった。荒ぶる水を鎮める代わりに、娘をひとり所望する――愛本橋の下、とぐろを巻いて子を産むその影を、覗いてはならぬと里は今も語り継ぐ。
概要
富山県黒部、愛本橋のたもとに伝わる大蛇の怪。川の主である大蛇が美男の若者に化けて茶屋の娘お光に通い、契りを結ぶ。お光は水神たる大蛇に嫁いで村を水害から守る道を選び、子をなしたのち二度と戻らなかったという。娘を祀る祠はかつて「大蛇の宮」と呼ばれ、今の愛本姫社にあたる。
出現
舞台は黒部川の中流、刎橋の名橋として知られた愛本橋のたもとにあった一軒の茶屋である。看板娘のお光は、ある晩、川辺で見目のよい若者と出会う。夜ごと語らううちに惹かれ合っていくが、その若者こそ、黒部川の淵に棲む大蛇が姿を変えたものであった。
伝承
若者の正体を知ったお光は、水を司る大蛇に自らを捧げれば村を水害から守れると考え、親に告げず消息を絶ったという。のちに子を産むため戻った折、その場をひそかに親が覗くと、大蛇がとぐろを巻いて子を産んでいた。以来お光は帰らず、大蛇となった娘を祀る祠は「大蛇の宮」と呼ばれた。
特徴
大蛇は黒部川の淵を棲み処とし、水を意のままに操って里に水害をもたらすほどの力を持つとされる。人の前では見目麗しい若者の姿をとって近づき、想いを遂げる。ひとたび祀られてのちは荒ぶる流れを鎮める水の守り神ともなり、産み落とされた無数の子蛇もまた川に棲みついたと語り継がれる。